ペンキ塗りを終え、甥っ子が帰って行った後、田中さんが到着。田中さんも間に合えばペンキ塗りをしたいと考えていたらしく、早く終わりすぎて拍子抜けした感じでした。
現場も大詰めになってきて決めることが次から次へと出てきます。
まずは3階テラスのカウンター下に設置されるヒートポンプの室外機。これは以前から議論になっていたことです。意匠設計としては少しでもカウンターの下の奥の方へ押し込みたいところ。田中さんがメーカーに問い合わせて必要なクリアランスを教えてもらって、可能だという位置まで下げて欲しいと要望を出していたのですが、実際に設置工事をしてメンテナンスも請け負う設備工事会社の方が、頑なにカウンターの手前の方まで出さないと経験上問題が出るだろうと譲りません。当初はカウンターのエッジに合わせて設置しろと言っていたのを、なんとか100mm奥という位置まで押し込んだところ。こちらの要望としてはできれば300mm、可能なら更に奥へ置きたいので、かなり差があります。
何か問題が生じてもメンテナンスできませんよと脅されてしまうとなかなか厳しいです。一旦奥の方へ設置して、問題が生じたら手前に移動するというのはどうだろうか、と平川さんに相談すると、その場合、まずどのような問題が生じているかを調べに来るのに1人工。その次に問題解決のために工事をしにくる人が2人工。合計3人工。室外機はチョーフのものと三菱の物の2種類あるので、更に倍になって6人工。1人工1万円以上はするのでかなりの金額になってしまいますよ、とのこと。
平川さんとしては、150mmで何とか設備会社を説得しますと言って下さるのだけれども、テラスに置かれるものとして室外機はかなり見苦しいのでできればもう少しだけでも奥に隠したいという気持ちが捨てきれません。田中さんもかなり渋い表情。実際何ミリ奥に置くとどうして問題が生じる、という論理的な説明がなく、経験上この寸法なのだと言われてもなかなか納得が行きませんが、話が完全に平行線になってしまったので、仕方なく平川さんに150mm以上可能な限り奥に設置して下さいと、託すことにしました。
次に、作り付けの家具がどんどん運び込まれてきているということもあり、家具に取り付けるコンセントやスイッチ類についての打合せ。
途中で各階段に取り付ける手すりについて田中さんから、先日説明して下さったスチールの金物を壁に取り付けて手すりを設置するというディテールが、TH-1としては全く見積もりに入れておらず、既製品の取付け金物を使用するつもりで見積もっていたので、もしスチールの金物を使用することになると全部で15万円ほどの追加工事になってしまうとの説明がありました。これは厳しい...というこちらの反応を見越して田中さんが増額にならない解決策を考えておいてくれました。スチールの金物を使用せず、大工工事のみで可能なように木製の手すり子、木製の手すりで製作するという方法です。平川さんによると、この方法でも十分頑丈に作れるとのこと。デザイン的には今ひとつできあがりの感じが想像できないのですが、安全面では問題がなさそうなので、この方法でお願いすることにしました。
そして子供室の2段ベッドの詳細について。田中さんが施工図に赤入れをして訂正した物を平川さんに説明し、相談をしました。ベッド下の収納の寸法(田中さんが無印の収納製品の寸法に合わせて変更してくれました)、輻射冷暖房のパネルの上下の位置に来る器具の部分を隠すパネル、2段目のベッドに上るためのはしごの詳細、ベッドからの落下防止の柵、などなどきめ細やかに図面を検討して修正してくれました。しかし、工期も後2週間を切っている状態で平川さんにはやや焦りも出てきているようで、細かい変更は可能だけれども工期が厳しいのです...とやや弱気な反応。すかさず田中さんが28日には入居なので絶対に間に合わせて下さいよ、と釘をさしていました。いやはやさすが。現場からの泣きが入ってもつけいる隙を与えない。こういう風に締めどころを心得ているのは、経験の賜物なのでしょうか。実際に物を作る人間とは異なる、現場を監理し統括する建築家という立ち位置をぶれずに持つことが大事なのだなと思いました。良い物を作るという目標は一緒でも、そのためには職人や現場監督と建築家は一線を引かなくてはならないのですね。施主と建設会社との間に立ち施主に代わって建設会社と交渉するという仕事であると考えると当然のことと言えるのかも知れません。
その他、門柱に取り付ける予定だったコンセントの位置、排水枡の上に乗る金物の蓋(グレーチングにするか鋳物にするか)、1Fキッチンテラスの水栓、等々を話し合い決めました。
そして平川さんとの打合せが終わった後、田中さんから追加工事の見積もりについてお話がありました。電気の配線を将来のことを考えて世帯間でうまく切り替えられるようにするという工事、2階のエレベーターホールの床にのぞき窓を作る工事、外構にベンチを作る工事、などがその都度、見積もりも出してもらい、こちらとしても了承してゴーサインを出した工事です。ま、これらに関しては仕方ないところ。結構痛いのが、3階のキッチンです。キッチンカウンターを集成材から人工大理石に変更したのですが、デュポンのコリアンの見積もりを見て、かなり高額だと感じたのでクラレのノーブルライトという製品に更に変更してもらったのですが、あまりコリアンと金額が違いませんでした。これならより上品な質感のコリアンのままにするという選択肢もあったかな。両方の見積もりが揃わない状態での判断だったので、悔やまれます。それとIHおよび換気扇の変更。色々紆余曲折があって決まった現在の組み合わせなのですが、金額の増減はあまり意識していませんでした。結果的に高い方の組み合わせを選んでしまったようで、少なからぬ増額となってしまいました。
まだ詳細はTH-1と田中さんの間で折衝をしてから知らせてくれることとなっている項目がいくつかあるとのこと。他にもちょこちょこと変更した箇所が追加になっていたり、中止した工事に関しては逆に減額を見て欲しいとか、というやりとりがあるそうです。田中さん頑張って下さい!と祈るばかり。中でも大きいのは塗装下地としてのコンクリートの補修だそうです。地下と1階は漆喰を直接コンクリートに塗るという予定だったのですが、不陸が目立ちきちんと塗るのは難しそうだということで現場判断でコンクリートを平滑にする左官工事を行ったのです。そして2階、3階に関しても、もともとはコンクリートの荒い下地にそのままペンキを塗るというざっくりした仕上げを考えていたのですが、こちらも左官で平滑な下地を現場判断で作ってくれてしまったのです。その工事費がかなりの額となっていて、できれば払って欲しいとのこと。ただ見積もりも出していないし、施主および建築家の了承も得ずに行った工事なので、強くは主張できないことはわきまえているとのこと。結果的に美しくできあがっているので対価を与えたいとは思うのですが、予定外の出費が嵩むのはかなり厳しい状況だし、1か0かではなくその中間になるとは思うのですが悩ましい判断を迫られているなと感じます。
いずれにせよ追加の工事費は外構の造園工事と家具の新調に当てようと思っていた予算をすでに食いつぶしてしまったようです。家具も外構も住みながらぼちぼちというところでしょうか。もちろん、ウッドデッキを南洋材のクマルから栗およびカラ松に変更しようかと検討していたのは取りやめにしました。
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