Saturday, May 19, 2012

openvisionで打合せ

午後3時より少し前にオープンヴィジョンに到着。なんと田中さんのご主人であり、オープンヴィジョンでのパートナーである斉藤さんが出迎えて下さいました。斉藤さんも大学の研究室の先輩なのですが、コーヒーを入れてくれたりして恐縮してしまいます。

打合せ開始。

■外観に出てくる素材の色決め。
屋根はダークグレー、外壁はカルダンパネルに少し白っぽいランデックスコートを塗布した薄いグレー、そしてアルミサッシはダークブラウンと言うことが既に決まっています。今回色を決めなくてはならないのは、軒先に付く雨樋、その下に見えてくるカルダンパネル上端に被さる水切り、そして竪樋。どこで屋根の暗い色と、外壁の淡い色との境界線を引くかが問題です。色々検討した結果、雨樋はダークグレー、水切りから下が明るいグレーに近いシルバーとなりました。
そして竪樋の色なのですが、設備の方が書いた仕様には「耐火ビニル二層管」と記されています。この二層管というのは斉藤さんの説明によると、塩ビ管のまわりを繊維モルタルで包んだもののことで質量があるので流下音が低減されるグレードの高いものなのだそうです。質感としては割とポソポソしているとのこと。ところが、同じ壁面に平行して配水管やドレインが並ぶのですが、こちらは塩ビ管となっています。平行して配置される配管類の素材感はできるだけ揃えたいし、屋外配管に二層管を敢えて使う必要も無いだろうということで、全て塩ビ管に揃えることにしました。

■3階東側テラスに面するサッシと方立ての納まり
田中さんが手書きで描いた10分の1の図面を見ながら検討です。いつものことながら、こういう入り組んだ細かくてメカニカルな箇所をささっと手書きで描いてしまえるのには関心します。何が何をどうやって支えているかという理屈を今一つ理解できていないぼくとしては出来上がりの姿がどのようになるのかを想像するので精一杯です。サッシを支える方立ての寸法は風圧に耐えるため構造の人に適切な寸法を相談する必要があるとのことでしたが、見た目にも重要な要素なので意匠としても検討が必要な箇所です。今回はハニカムサーモという断熱効果のあるスクリーンを取り付けるので、それとの関係も考慮に入れて、当初のスケッチで描かれていたスチールのアングルの向きを反転させることにしました。

■木屋根構造とコンクリート立ち上がりの関係
もともとはコンクリートの立ち上がりの上面にスチールのプレートを取り付けて、そこにホームコネクターと呼ばれる金物を溶接し、木部と緊結するという方法をとることになっていたのですが、プレートなしで直接コンクリートに木屋根構造を載せてしまうことができるかも知れないという話しになっているのだそうです。プレートの厚みは9mm。底目地のようになって、それはそれでシャープに見えるかなと思ったのですが、田中さんが手元にあった模型材料を使ってこんな感じに見えるよ、と実物大で確認してみたところ、9mmが意外に分厚くて奥に控えているとは言え存在感があって何か挟まっているという感じがしたので、室内側は余計な物は一切省略してコンクリートと木屋根構造が直接緊結されるような形にすることにしました。テラス側の軒先部分に関しては雨がはねたりすることも想定してコンクリートの上に木構造を直接載せるのはやめてプレートを挟み込むことにしました。
目地の幅が、それを見る場所からの距離との関係でかなり印象が変わってくることを学びました。今回の場合、コンクリートの上端が座ったときの目線の高さに近いということも効いているのだと思います。

■トップライトの窓まわり
せっかく今回はソリッドな木の塊で木屋根の構造を作るので、窓まわりで木の塊の断面が見えると良いなと思い、そのような納まりになることをお願いしていました。しかし1階のエントランスホールでもそうでしたが、窓まわりは色々な機能を担う部材が必要となってきます。このトップライトでも、窓を開けたまま換気ができるように網戸が必要となります。木屋根構造材よりも室内側に網戸を付けるとせっかくの木口をあらわしにした意味が半減してしまうので、構造よりも室外よりに網戸を設置したいところ。でもあんまり窓に近くなってしまうと、軸回転式の窓なので網戸と窓が干渉してしまい開いたままにすることができなくなってしまいます。なのでその問題を解決するために、窓全体を少し外へ押し出すような形で屋根に取り付けることにしました。外観の印象は変わるかも知れないけど、あんまり見える場所でもないので、気にする必要もないでしょう。

■トップライトの取り付け位置
南側に取り付けられるトップライトはちょうどデスクを置く場所の正面に来るように位置が決まっています。なのでデスクに向かっているときに外が見えたら良いなと思い、当初の設計よりも下げてはどうかと田中さんと相談しました。これも実際にどのくらいの位置関係になるのか田中さんが段ボールの板を持ってきて実物大で検討。けれども排煙の規定(?)で天井からの距離が制限されているので、現状よりも下げられて70mmくらいと言うことが分かり、さほど下げる意味もなさそうだと感じました。そして、窓を下げることによって木構造あらわしになっている天井面の連続性が弱まってしまうことも分かり、やはり天井面(壁面?)の真ん中にすることに落ち着きました。空を見上げるための窓だと考えれば、それも良いように思えます。
キッチン正面の窓に関しては、隣りの養老乃瀧の建物の窓と向かいあってしまう可能性もあるので、もう少し保留。でも例え養老乃瀧の開口部の位置がずれていたとしても、壁がかなり近くまで迫ってきているので、眺望はほとんど期待できないので、場合によっては少し窓位置を高くして空が見えるような所まで移動するのもありだな、と思いました。

■地下へ降りる階段
この階段はちょっと複雑で、作り付けの家具で構成される部分と壁からの片持ち梁で支えられる部分とがあります。田中さんが段板とそれを支えるコンクリートの片持ち梁とがぴたっと揃ってしまうのもどうかと思うと仰有り、こういうのはどうかなと言ってシャルロット・ペリアンの設計した住宅の階段の写真を見せてくれました。(田中さんはコルビュジエと協働したペリアンとアイリーン・グレイといういずれも細やかな設計をする女性の建築家にとても興味があるとのこと。なんだか納得。)ということで、片持ち梁の端部を少し奥に縮めて段板を張り出させることとしました。
階段の段鼻についてはノンスリップ加工をすることとなっていましたが、斉藤さんの提案で集成材の段板の鼻先に堅木で色の違うチーク材の様な物を少しだけ出っ張らせて埋め込むのが良いだろうということになりました。

■キッチン
一通り田中さんの用意していた議題に決着をつけたところで僕からキッチン家具のことで収納量をできるだけ増やせないかということ相談しました。現在の仮住まいでもキッチンまわりはどうしても物が増えてしまって雑然としてしまっているので。あわせて、キッチンカウンターをどうしようかということも相談しました。現在選択しているIHコンロだとコンロの周囲を木では作れないのだそうで、そうなってくると全体も木ではなくステンレスか人造大理石かと言った選択になってきます。キッチンカウンターの上面に設置される換気扇がステンレス・ヘアラインなのでそれに揃えるのが無難という感じ。でもちょっとインテリアとしてはギラギラしすぎにならないか心配です。他の選択肢として、「人研ぎ」という大理石の骨材を入れたモルタルを手作業で研ぎ出すという方法があります。でもやってくれる職人さんが少ないとのこと。ちょっと興味あるのですが難しいのかな。

■インテリア
最後に3階の家具について田中さんの意見を聞きました。今度の引越を期に色々と家具も買い替えたいと考えているのですが、空間のイメージと合うものがどのような物なのか考えれば考えるほど分からなくなってきてしまっていました。それに、現在仮住まいで使用している家具も引越を前に買い替えられたらと考えているので建築より少し先行してイメージを固めたいと考えています。
最初は内装に木が多く使われているので家具もそれに合わせて木の家具が良いなと考えていたのですが、照明もモリソンのフロスという白い磨りガラスのボール状の物なので、少し白くて工業製品的な素材を取り入れても良いかなという気持ちになってきていました。
田中さんの意見はどうなんだろうと思っていたので聞いて見たのですが、田中さんとしてはあんまりきちっと全体を揃えてしまって息苦しくなるよりも、ある程度不揃いでも良いから少しずつ気に入った物を買い足して行くのが良いのでは、という意見でした。それもいいな。
建築家は家具までデザインする人も沢山いるし、自分の作った空間にはこの家具、と決め打ちしている人もいます。でもそう言う緊張感のある空間よりもリラックスした空間の方が月ビルのような建築には合っているように思います。
ちょっとずつ買い足して行って買い足す度にそれまでに入手していた家具との組み合わせを考えて柔軟に判断していくというのは、最初から決定打的な解答を求めるというのではなく、じわじわと展開に合わせて連なる決定をしていくという田中さんの設計スタイルにもあっているような気がします。

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